明日のコンサートについて。
まづは私の出番においては、トッド・ニューフェルドのギターとビリー・ミンツのドラムとの3人の編成で、フリーでの演奏をする。
今回は12月に行ったレコーディングでの内容の継続という形で、
テーマに雅楽の東遊びや、八重山の古謡などを唄い、インプロビゼーションのボイスも入れてみようと思っている。
この試みを始めたのは、アメリカの音楽を学んできて、ふと振り返った時に、
自分の生まれ育った土地の音楽がどうしようもなく置き去りにされているように感じたことがきっかけだ。音程の感覚も、楽譜の書かれ方も、リズムの感覚も、私は日本の音楽について何もしらなかった。
近世の家元の伝統や、戦後の商業音楽よりも、もっと前の、土地の信仰に基づいたものを知りたいと思った。
日本の古い音楽、唄をモダンなインプロビゼーションに混ぜ込むことは、
所謂12音階に基づいた「ジャズ」というやり方と日本音楽を混ぜることよりも自然に成すことができるのではないかという実験である。
なぜなら私の弾くインプロビゼーションは、調性と無調性の間を行き来するものなので、
理論に基づく和音よりも、ひとつひとつの自立した音の有機的な集まりを主体とする。
で、これは日本の音楽の特徴であるヘテロフォニーとの相性が良いのではないかと思っている。
ジェン・シューのソロオペラ公演を見て衝撃を受けた私は、
トッドを通じて知り合ったジェンに、思い切って共同コンサートを持ちかけ、今回の演奏も決まった。
正直言ってものすごくプレッシャーはあるけれど、彼女の様な素晴らしい音楽家とステージを共にすることに抑えきれない興奮もある。
ジェンの研究してきたものは、韓国やインドネシアの祭祀音楽であるようなので、
インプロビゼーションとアジアの土着音楽の融合という点でテーマは同じだ。
私としては、どうしてもヨーロッパ中心主義や、黒人中心主義になってしまう傾向のある音楽の世界に、多様性をいまいちど提示したいという気持ちがあり、
そうするために「フリー」またはインプロビゼーションという演奏方法は最適のキャンバスである。
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